アルコキシシランは基板表面のOH基と結合し、Si-O-Si結合を形成します。通常は酸性のエタノール溶液、無水トルエンもしくは塩化メチレン中の還流下などで行われます。、水分によってアルコキシ基などが加水分解され、シラノール基,Si-OHが生成します(Biomaterials, 2000, 21, 605-616, Langmuir, 2003, 19, 5169 Langmuir, 2002, 18, 3181)。乾燥、キュアさせる事によシラノール基と基板表面のOH基が脱水縮合し、水分子が失われ基板上で共有結合が形成されます。
基板:ガラスやSiなどの基板表面にOH基を形成する為に、表面修飾する直前に下記1.3.の方法で洗浄する事をお奨めいたします。PDMSの場合はプラズマ処理をお奨めいたします(Langmuir,
2001, 17, 4090-4095)。
単分子膜の形成:多層膜の形成を最小限に抑える為、キュアの前に基板を水、エタノール(もしくは1.4.記載の有機溶媒)で十分に洗浄して下さい。
ガラス、Si等: MeOH : HCl (1:1)溶液に30分浸漬して下さい。イオン交換水で十分に洗浄し、濃硫酸中に2時間浸漬し、沸騰したイオン交換水で再び洗浄し、窒素雰囲気下で乾燥させてください。(Cras, J. J.; RoweTaitt, C. A.; Nivens, D. A.; Ligler, F. S. Biosens. Bioelectron. 1999, 14, 683-688.)。
次の溶媒を使用する事により高品質の単分子膜を高い再現性で形成する事ができます。
(i) | エタノール溶液 |
(ii) | トルエン |
(iii) | ヘキサデカン (Aldrich)とHPLCグレードの四塩化炭素(Aldrich) 80:20の混合溶媒。 |
(iv) | バイシクロヘキシル(Aldrich)、四塩化炭素(Aldrich)、クロロホルム、80:12:8の混合溶媒。 |
トリクロロシランはアルコキシシランより反応性が高く容易に加水分解しHClを生成します。不活性ガス下で、湿気を避けて保存して下さい。
基板表面を修飾する前に、 MeOH : HCl (1:1)溶液に30分浸漬して下さい。イオン交換水で十分に洗浄し、濃硫酸中又はピラニア溶液中に2時間浸漬し、下記3.1.記載の適切な溶媒でリンスしてください。
トリクロロシランによる単分子膜の形成は溶液(Wasserman, S. R.; Tao, Y.-T.; Whitesides, G. M. Langmuir 1989,5, 1074-1087, Ulman, A. Adv. Mater. 1990, 2, 573; Sagiv, J. J. Am. Chem. Soc. 1980, 102, 92)もしくは蒸気(Chaudhury, M. K.; Whitesides, G. M. Science 1992, 256, 1539)から可能です。通常3mMの濃度のシラン溶液が使用されます。ガラス容器は新品洗浄済みでアルゴンプラズマ処理したものを使用してください。2種類の混合溶媒が通常使用されます(Sagiv, J. J. Am. Chem. Soc. 1980, 102, 92)。
(i) | ヘキサデカン (Aldrich)とHPLCグレードの四塩化炭素(Aldrich)80:20の混合溶媒。 |
(ii) | バイシクロヘキシル(Aldrich)、四塩化炭素(Aldrich)、クロロホルム、80:12:8の混合溶媒。注:溶媒中の含水率がシラン化反応に影響する為、塩素系溶剤は無水化して下さい(Silberzan et al. Langmuir 1991, 7, 1647.) 。 |
SAM形成方法はトリクロロシランと同様です。溶液(Wasserman, S. R.; Tao, Y.-T.; Whitesides, G. M. Langmuir 1989,5, 1074-1087, Ulman, A. Adv. Mater. 1990, 2, 573; Sagiv, J. J. Am. Chem. Soc. 1980, 102, 92)もしくは蒸気(Chaudhury, M. K.; Whitesides, G. M. Science 1992, 256, 1539) から形成可能です。通常3mMの濃度のシラン溶液が使用されます。ガラス容器は新品洗浄済みでアルゴンプラズマ処理したものを使用してください。3種類の混合溶媒が通常使用されます。
(iii) | ヘキサデカン (Aldrich)とHPLCグレードの四塩化炭素(Aldrich) 80:20の混合溶媒。 |
(iv) | バイシクロヘキシル(Aldrich)、四塩化炭素(Aldrich)、クロロホルム、80:12:8の混合溶媒。注:溶媒中の含水率がシラン化反応に影響する為、塩素系溶剤は無水化して下さい(Silberzan et al. Langmuir 1991, 7, 1647.) 。 |
(v) | 無水トルエン。 |
基板表面を修飾する前に、 MeOH : HCl (1:1)溶液に30分浸漬して下さい。イオン交換水で十分に洗浄し、濃硫酸中又はピラニア溶液中に2時間浸漬し、下記3.1.記載の適切な溶媒でリンスしてください。
(i) | 2つのメチル基が、基板上のヒドロキシル基により形成されたSi-O結合を保護し、トリクロロシランよりも加水分解しにくい安定な状態にします。 |
(ii) | 塩素原子が凝集の可能性を排除し、多層膜の形成を防ぎます。 |
(iii) | クロロシランは容易に加水分解しHClを生成します。不活性ガス下で、湿気を避けて保存して下さい。 |